日本ミツバチの育児期間、時期、子捨てについて
日本ミツバチ(Apis cerana japonica)の育児期間については、以下のように整理できます。
育児期間(卵から成虫まで)
日本ミツバチの卵が成虫になるまでの期間は以下の通りです。
- 卵期間: 約3日間
女王蜂が産卵した卵は3日間で孵化します。 - 幼虫期間: 約6日間
幼虫は働き蜂によってローヤルゼリーや花粉、蜜を与えられ成長します。この期間が終わると幼虫は自分で繭を作ります。 - 蛹期間: 約12日間
繭の中で幼虫が蛹(さなぎ)になり、羽化して成虫になります。
合計期間
- 働き蜂: 約21日間(卵から羽化まで)
- 雄蜂: 約24日間
- 女王蜂: 約16日間
これらの期間は、環境条件(気温や餌の供給量など)によって多少前後する場合があります。
育児時期は、年間を通じて以下のようなサイクルで行われます。
育児時期は特に巣の活動が活発になる春から秋に集中します。
育児時期の概要
- 春(3月~5月)
- 育児活動が本格的に始まる時期です。
- 気温の上昇とともに女王蜂が産卵を再開します。
- 花粉や蜜が豊富に得られる季節であり、働き蜂がこれらを集め、幼虫に与えるために巣内の活動が活発化します。
- 夏(6月~8月)
- 育児活動が最盛期を迎えます。
- 巣の人口が増え、働き蜂や雄蜂が大量に生まれます。
- 暑さにより巣の温度を調整するため、働き蜂が通気を確保する動きが見られます。
- 秋(9月~11月)
- 育児活動は徐々に減少しますが、女王蜂はまだ産卵を続けます。
- 働き蜂が冬に向けて蜜や花粉を集め、巣を維持する準備が進みます。
- 冬(12月~2月)
- 育児活動はほとんど停止します。
- 寒さを避けるため、ミツバチたちは巣の中で団結し、集団で体温を保ちながら冬を越します。
- 女王蜂の産卵も一時的に止まります。
育児時期に影響を与える要因
- 気温: 日本ミツバチは気温が約15℃を下回ると活動が鈍くなり、育児も減少します。
- 餌の供給量: 花粉や蜜が不足すると、育児活動が制限される場合があります。
- 巣の健康状態: 病気やダニの影響を受けると育児が阻害されることがあります。
日本ミツバチの「子捨て」とは
巣内で育てられている幼虫や蛹(さなぎ)を巣外に運び出して捨てる行動を指します。
この行動は、通常の育児プロセスとは異なり、何らかの異常や環境的な要因が原因で起こります。
子捨ての原因
- 食糧不足
- 花粉や蜜が不足すると、ミツバチは育児活動を縮小し、育てきれない幼虫や蛹を捨てることがあります。
- 特に寒冷期や花の少ない時期に発生しやすいです。
- 巣の過密状態
- 巣内の人口が多すぎる場合、一部の幼虫や蛹を減らすことで負担を軽減しようとすることがあります。
- 温度や湿度の異常
- 巣内の温度や湿度が適切に保てない場合、幼虫や蛹が正常に発育できなくなり、排除されることがあります。
- 病気や寄生虫
- 幼虫や蛹が病気に感染した場合や、寄生虫(例えばバロアダニ)による被害を受けた場合、病原菌や寄生虫の拡散を防ぐために捨てることがあります。
- 女王蜂の産卵能力の低下
- 女王蜂が老齢化して産卵能力が低下すると、働き蜂が一部の卵や幼虫を捨てる場合があります。
子捨ての兆候
- 巣の近くや周辺に、捨てられた幼虫や蛹が見つかる。
- 巣内の働き蜂の活動が低下し、育児室が減少している。
- 幼虫や蛹が明らかに異常な形状(例えば変色、萎縮)をしている。
対策
- 食糧の補充
- 蜜や花粉が不足している場合、人工的に餌を与えることで子捨てを防ぐことができます。
- 巣の管理
- 巣内の過密状態を緩和するため、群を分割したり新しい巣箱を提供したりすることが有効です。
- 病気や害虫のチェック
- ダニや病気の兆候を定期的に確認し、必要に応じて駆除や治療を行います。
- 環境の調整
- 巣箱を適切な場所に移動し、直射日光や湿気を避け、巣内の温度や湿度を安定させます。
「子捨て」は自然界の適応行動の一環でもありますが、頻繁に起こる場合は巣の健康状態や管理方法を見直す必要があります。